「月詠み月食む ~佰鬼耶病譚~」
「無理だな。そいつには『病魔』が憑いている」
鎖国が解かれ、西洋の文化が流れ込んではや二十年。首都・トウキョウ。
東洋医学全盛の中、あえて西洋医学を志す縁(えにし)はなかなか周囲の理解を得られず苦悩していた。
そんなある日、彼女は道端に男が倒れているの見付けた。
西洋かぶれの風体をしたその男 - 本人は倶奴楽(クドラク)と名乗った - に頼るあてがないと聞き、見かねた縁はしばらく彼を自宅に居候させることにする。
毎日、診療所の隅に座ってあくびをしながら縁の奮闘を眺めるだけの倶奴楽。
そんな彼の姿を誰も気にとめなくなった頃、縁が手を焼いている患者を見た倶奴楽は、眠そうに目をこすりながらこう呟いた。
「そんなやり方じゃ治らねぇ。こいつには、病魔が憑いている」
病魔とはなにか。そして、病魔と人との間の真実とはなにか。
縁と倶奴楽。二人が奏でる、人と命の物語。
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