Story - MILDE-SORTE /  [Luna-Haze]
 

作品紹介

キョウ・ヘクターは、探偵である。まあ要するに俺のことだ。
『ミルデソルテ』のトウキョウエリアの一角、オギクボに小さな探偵事務所を構え、猫探しから浮気調査、ストーカー対策など世間一般的に重要かつ難解な業務を淡々……もとい、細々と遂行する名探偵である。
仕事に追われることも無く、煙草の煙に満ちた事務所の中で優雅に日々を過ごす。
財布の激痛を感じながらも、この生活はそれなりに気に入っていた。

だが、そんな至福の時間に土足で踏み込んできた奴らがいた。
数ヶ月前、突如ふらりと現れ事務所に居座り始めた少女と猫。

少女は「ヘザー」と名乗った。

目障りな奴等だったが、しばらく一緒に過ごすうちに少し興味が湧いてきた。
彼女は、どうやら複数の人格を持っているようだ。
時には江戸っ子のような男性のように、また時には母性豊かなお姉様のように振る舞う。

彼女はまた、朝から晩までネットに接続し、ただ淡々と自分の仕事をこなしていた。

株式の売買。
サーバ増築時の地域増加を利用した不動産への投資。
観光地区の大型リゾートホテルへの出資。

そういったことを、まるで茶でも飲んでいるかのように行っている。
目の前にいるのは間違いなく大富豪、だったら場所代としてこの貧乏探偵事務所に寄付とかしないものかとも思うわけだが。
そもそも何でこんな場所に通うんだ、と聞いたところ、ヘザーはこう答えた。

「悪党に追われてるの。正義の名探偵なら、か弱い少女一人匿ってくれてもいいんじゃない? それにここ、静かだし」

……どうやら俺の都合は微塵も考慮していないらしい。だったら少しは仕事の手伝いくらいしてもいいもんだろ。
アルタという黒猫が人型ロボットになって余計に騷がしくなったおかげで、俺の優雅な時間は完全に失われちまったわけだが……。

そんなある日、一通のメールが俺へと送られてくる。
そこに書かれていたのは「ウィルス型ドラッグ・ピナゴラータ中毒者の捜索依頼」と、かつての恋人「フィオナ」の名前。

「こうして俺達は、それぞれの過去を辿る事件に巻き込まれていった・・・・・・」?


▲page TOP